読書感想「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」戸部良一他6名共著
早速ですが書評というほど立派なものではないですが読書感想文をば。
以前から本屋ではよく目についていて、でも「本質」「日本軍」というフレーズでちょっと小難しそうだなと尻込みしていたこの本。
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 文庫
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読んでみた感想としては、400ページほどなので確かにボリュームありながらも、学者特有のちょい固めの書き方に慣れてからはすいすい読み進めることができました。
本の構成は大きく『失敗の事例研究』『失敗の本質』『失敗の教訓』の3つ。
概ねアマゾンレビューに要旨が書いてあるので、それだけ読めば要旨はつかめます。ただ、個人的にこの本を読む意義として、前半大部分を占める「一章『失敗の事例研究』」で取り上げられる6つのケースを知ることができるところにあるかなと感じてます。
「空気の読み過ぎ」「過度の精神主義」「大局観・グランドデザインの欠如」「組織の硬直化」等が分析の結果失敗の要因として挙げられていて、それ自体は現代の我々日本人の課題でもあり、それだけ見れば、何も新しさはないかもしれませんが…
多くの人命がかかった場面で、これらがことごとくマイナスに作用したことが生々しく描かれていて、上記失敗の要因がいかに決定的だったか、相当なインパクトがあります。(それでも「結果ありきの書き方で偏ってる」と批判されてますが限られてるページの上では仕方ない。)
ノモンハン・ミッドウェー・ガダルカナル・インパール・レイテ・沖縄、、どれも日本史を勉強したことのある人なら名前だけは知ってるのではないでしょうか。
戦争自体、最初から物理的に勝ち目がないもので、特に上記戦いは遅かれ早かれ形勢を逆転されるだろう流れの中で、たまたまターニングポイントとなる戦いになった、程度の認識でしたが、著者も指摘している通り、負け方にも負け方があるだろう、と。
戦争の是非は改めて論じるまでもありませんが、戦い方によってはその結末も相当程度変わったのではないかと思いました。
これもまたご指摘済みですが、第一次世界対戦を日本はまともに経験していなかった。これが決定的でした。ただ、経験してたとて勝てたかというと…
現代にも通じる人間の、特に日本人の組織的習性をはっきりと指摘している良書でした。
失敗の本質 日本軍の組織論的研究 (中公文庫) [ 戸部良一 ]
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